16ℓの薬剤を搭載したドローン(小型無人飛行機)の機体が6個のプロペラに支えられて舞い上がるー。空知管内奈井江町大和のJA新すながわで、組合員2人がドローンを使った防除を自分たちの農地や地域の水田などで行っている。地域では情報通信技術(ICT)による省力化など農業の姿が大きく変わろうとしている。
2人は水田など25ヘクタールを作付けする山瀬優輝さん(40)と、同地区で水田や小麦など27ヘクタールを作付けする堀雅俊さん(33)。これまで「パンクル防除機」を共同所有し防除作業を行っていたが、昨年ドローンを導入。「大和ドローン空楽部(くらぶ)」を作った。
導入に必要なライセンスは時代を先読みして5年前に取得。機種を更新した時に必要な追加ライセンスは同町の補助を活用して取得した。最初の年は延べ100ヘクタールの水田や大豆畑などを6時間ほどの飛行時間で防除した。21年も受託面積は拡大傾向だ。作業料は10a当たり1190円(税込み)と薬剤代。
飛行には「マニュアルモード」と「自動モード」があり、自動モードに必要な地図データは事前に現地を歩いてセットする。四角い土地の場合は四つ角を登録。変形した土地でも6カ所から8カ所を登録すれば、自動モードに対応できる。
飛行高度は3メートルで時速18キロにセットしてあり、操縦器で指示通りに安全確認して飛行開始。横に流れるドリフト(農薬飛散)に注意をすればかなりの強風でも飛行できる。1.2ヘクタールの水田の防除は約5分で完了する。作業は主に早朝の風の弱い時間帯に行うが、念のため近隣のトマトハウスが換気するまでに終わらせている。
山瀬さんは「パンクルなどに比べ、作業時間が短縮した。余った時間を有効活用できる」と語り、堀さんは「花粉症なので、これまでは熱い中で完全防備での防除作業はつらかった。その負担もなくなった」と話す。
ライセンス取得費用など導入経費は高額だが、作業の省力化に役立っている。2人は今後、自動操舵のトラクターや田植え機を導入する予定で積極的にICTを活用していく考えだ。
ドローンを飛ばすためには機種ごとのライセンスが必要です。これはみんなが乗る飛行機と同じです。
取材中、四角い水田の防除を見学しましたが、スタート地点から対角線の角で防除が終わりました。ドローンは真っ直ぐ最短距離を帰ってきたのには驚きました。