ハウスの開閉 手間を省く 「農家エジソン 岡本哲夫さん」

農業関連

 奈井江町茶志内で「高糖度トマト栽培」など約2.4ヘクタールを作付けする岡本哲夫さん(75)は、農作業に必要な機械装置などを自作し、農作業に活用している。
 これまでいろいろものを作ってきたが、自信作はビニールハウスにひさし。
 ハウス栽培では、雨が降ってくるとハウスの横のビニールを下す、いわゆる「ハウスを閉める」作業が必要になる。ハウス内の作物の葉に雨が当たるのは好ましくないので、不可欠な作業だ。
 雨がやむとまた開ける作業が必要になり、時間を取られる。センサーで制御して開閉する装置もあるが、高価だ。
 岡本さんは「作物に雨が当たらないようにするためには、横から雨が入るのを防げばよいのでは」と考え、ハウスのいわゆる肩の部分に約10センチせり出す「庇」を自作した。
 70メートルあるハウスの両側に取り付け、このひさしのおかげで雨が降っても開閉の必要はなくなった。その後、ハウスメーカーも庇付きのものを販売したが、庇の部品だけの販売していない。
 トマトの水耕栽培に必要な「かん水用ポンプ一式」も自分で部品を調達して組み立てた。メーカー製のものを参考に制作し、家庭用水道メーターを組み込み、流量を制御できるようにした。通常はポンプの作動時間で管理するが、「岡本式は流量を測定して管理する仕組み。この装置は隣の農家にも提供している。
 岡本さんは、「お金をかければ便利な装置を設置できるが、金をかけないで不便を解消する」をモットーに経営に取り組み、作業の省力化を図ってきた。
 装置を作るのに必要な技術は「我流」。若いころにひと冬だけ農機具整備のアルバイトに行ったことがあるが、それ以外はすべて独学。メーカーのサービスマンなどが機械を整備しているときは必ず立ち会って見て覚える。機械的なものは動きを見ていれば大体わかるが、電気は基盤についている線をたどって勉強した。最近はインターネットで調べることができ、昔より便利になったと語る。
 いろいろな部品の在庫を「ガラクタの山」と岡本さんは笑う。ビニールハウスの天井部分を2重にして、保温効果を高める送風機も作った。送風機はもともと穀物の乾燥機についていたもので、かなりの年代物だ。
 岡本さんは間もなく農業を引退するが、「これからもいろいろなものを作ってみたい」とやる気満々だ。

春香先生
春香先生

 取材で見せてもらった「かん水用ポンプ」の制御盤は素人が作ったとは思えないほどの完成度でした。自分で必要な機能だけを持った装置を作るので、ムダがなくメンテナンスも楽にできると思います。

 岡本さんが「金がないから頭を使う」という言葉が印象的でした。

タイトルとURLをコピーしました